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ち、心拍数の亢進状態がどのような生理学的応答によりもたらされるかを詳細に検討することを目的とした。

研究方法

1. 被検者

23〜30歳までの健康な日本人成年男子5人を被検者とした。いずれも実験の主旨を理解した上で被検者となることを了解した体育学専攻の大学院生で、表1にその身体的特徴、および最大酸素摂取量と最大心拍数を示した。

2. 実験方法と測定項目

すべての測定を実験室内にて行ったが、その際の室温は20.0〜23.1℃、湿度は37〜68%であった。朝練として被検者は午前8時より午前9時まで55%Vo2max強度での自転車こぎ運動を行い、その後は主に椅座位姿勢にて安静状態をとった。ただし、本研究では学校教育の中での朝練の意味を検討することを目的とするため、被検者を隔離することはせず人の出入りが少しはある室内にて回復の測定を行った。測定項目は心拍数、酸素摂取量、血圧、直腸温であり、血液分析として血漿中の乳酸、ナトリウム、カリウム、クロール、グルコースおよび血漿量の変化率(以下、△PV)、アドレナリン、ノルアドレナリン、アルドステロンの測定を行った。
最大酸素摂取量と最大心拍数は自転車エルゴメーターでの負荷漸増法による最大負荷運動にて測定した、朝練時を含む全測定時間中の心拍数、酸素摂取量、直腸温はマツククワルト(VINE社製)により測定した。血漿中の乳酸とグルコースは酵素膜電極法にて、ナトリウム、カリウム、クロールはイオン選択性電極法にて分析した。△PVについては赤血球数、ヘマトクリットを自動血球計算機にて分析し安静時を基準とした相対値として算出した3)。アドレナリン、ノルアドレナリンは高速液体クロマトグラフィーにて分析した。アルドステロンはラジオイムノアッセイにて分析した。測定は午前8時より午後3時まで行ったが心拍数、酸素摂取量、直腸温は1分毎に測定を行った。血圧及び血液分析は午前8時、9時、10時、11時、正午、午後3時に行った。一方、朝練を行わない状態でのコントロール実験は朝練を行った日の前後の2日〜7日以内の同一時間帯に行った。朝練の実験日とコントロール実験日は無作為に決定した。なお、食事は朝練の測定後の午前9時過ぎに朝食として大塚製薬(株)のカロリーメイト4本(79g)と水約300mlを、昼食は正午の測定後に学内の食堂にて自由に取らせた。

3. 統計処理

朝練の実験とコントロール実験との差については反復のある二元配置分析を行い、有意差の見られた場合には多重比較を行った。そして2群間の差についてはP<0.05を有意とした。

研究結果

各測定時の結果をまとめて表2に示し、コントロール実験との比較において何らかの有意差が見られた測定項目については図1に平均値にてそれらの経時的変化を示した。表2と図1にてわかるように朝練直後に有意な変化を示したのは心拍数、酸素摂取量、最大血圧、直腸温、△PV、乳酸、カリウム、アドレナリン、ノルアドレナリン、アルドステロンであったが、その後、午後3時までに有意差が見られたのは心拍数、△PVであった。なお、△PVのみは朝練後に減少したものの、その後は午後3時まで増加傾向を示した。一方、ナトリウム、クロール、グルコースにはすべての測定時

Table 1. Physical characteristics of the subjects.

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